パナソニック、ライカ、シグマ が共同発表した「Lマウントアライアンス」のキービジュアル
2018年9月はカメラ業界激動の一か月だった。知っての通り、各社がいっせいにフルサイズミラーレス一眼カメラを発表したからだ。自分もカメラ好きユーザーの一人として日々各社の動きをチェック、その度ワクワクさせられていた。
誰もが気軽にスマホを使って写真を撮るようになり、その影響からコンデジの販売は不振だ。それならと、カメラメーカー各社は利益を見込める高額なフルサイズカメラ市場に進出した。なかでもこれからの成長が見込めるフルサイズミラーレスカメラ市場へ。各社は2020年の東京五輪を見据えているはずで、そこで覇権を握ることこそが最大の目標だろう。
自分は二年前にソニーのフルサイズミラーレス機(α7 II)を購入したのだが、当時はソニーの孤独な一人旅。二大メーカーはレフ機開発に注力し、一方ユーザーもミラーレス機を低く見ていた感があった。その状況をひっくり返したのがソニーα9の登場だろう。続いて矢継ぎ早にソニーが発売した第三世代のα7シリーズを見て、いよいよニコンもキヤノンも安穏としてはいられなかった。
今回、各社の動きを見て最初に感じたのが「やっとソニーは二大カメラメーカーのニコンやキヤノンにも認められ、遂に脅威を与える存在にまでになったか!」ということ。このことはソニーユーザーの自分からすると、とても感慨深かった。
各社の発表を受けてさっそくネットの掲示板では、ひいきにするメーカー vs 他メーカー、ユーザー同士の大バトルが繰り広げられている。(笑)その書き込みは不毛なものがほとんどだけど、たまにすごい情報があり、読む分には結構面白い。
自分は、新しく生まれた「フルサイズミラーレス市場」において、各メーカーがこれから何十年もお互いに切磋琢磨しつつ、進化して欲しいと思っている。競争のないところにイノベーションは生まれないから。そしてカメラという分野は、日本のメーカーがほぼ独占しているという、他にはない特別な市場なのだ。そんな意味でも各メーカーは、特にこのカメラ市場ではずっと頑張っていてほしいのである。ましてやケータイの様にガラパゴス状態で終わってしまうのは許されない。
で、まず先陣を切ったのはニコン。新しくZマウントを立ち上げ気合が入っているように見えたが。
ニコンZ7/Z6 8月23日発表。※今日現在、最初に発売された高画素機 Z7 の最安値は約40万円。
続いてキヤノン。EOS Rを発表。こちらはニコンよりはこなれた価格でスタート。
EOS R 9月5日発表 ※今日現在の最安値は約23万円。
実はニコンやキヤノンの発表を見て同じような感想を持った。それは従来の新製品・新マウントの発表のようで、自分が期待した、ミラーレスカメラならではのユーザーメリットを最優先に開発された製品だとは思えなかったことだ。
細かいスペックには言及しないが、ユーザー目線で言うと、その「ミラーレスならでは実現できる・備えて欲しい機能」が弱い印象がした。(ボディ内手振れ補正の有無、バッテリーの持ち時間、ポートレートを撮る人の瞳AF、動きものを撮る人には便利な連射に関する機能、プロユースの為のダブルスロット、自分のように星を撮る人の為のブライトモニタリングや、タイムラプス撮影時にも必要となる外部バッテリーからの撮影時給電等々)。
先日ソニーが「動物瞳AF」を発表したが、こんな機能こそミラーレスカメラならではの、一眼レフ時代に存在しなかったユーザーメリットではないだろうか。「F値が0.95のレンズ開発中」とか「大口径マウントにより画質が少し良くなるレンズを開発できる」等は、自社ユーザーにはアピールできても、他社ユーザーに対しては大きな訴求ポイントにならないと感じた。
いや、百歩ゆずって、低価格カメラならそれもアリだと思う。しかしこれらどれもが20万~40万と高額なフルサイズカメラ。たとえそれらが滅多に使わない機能であっても備わっていて欲しい。
そして最も残念なのは、用意されたネイティブマウントレンズは高額で本数も少ないということ。これでは他社からのリプレース需要までは期待できない気がする。もちろん、従来からの自社ユーザーを大事にしなければならないのは二大メーカーの責務であり、当然のことかもしれない。開発の時間もたらなかったかもしれない。でも、それでも「フルサイズミラーレス」という新しい舞台でもうちょっと攻めてほしかったし、それが自分が最も残念に思った点だった。
ニコンとキヤノンの発表が終わりなんとなくモヤモヤしていたところ、突然パナソニックから突然目の覚めるような発表が!
パナソニック LUMIX S1/S1R と「Lマウントアライアンス」 9月25日発表 ※デジカメ Watch TV
そしてさらに驚いたのは、ライカとシグマとパナソニックが協業した「Lマウントアライアンス」だ。今後は三社が自由にLマウントをベースにしたレンズと、なんとカメラボディーもつくれることになる。実際にシグマはFoveonセンサー!を搭載したカメラの開発を発表した。このように、三社がお互いのカメラボディーでお互いのレンズが使用できるということが「Lマウントアライアンス」という仕組みの核心だ。そして三者はそれぞれ違った強味を持っているので、ユーザーとしては個性の違う豊富な製品を使えるという、なんとも魅力的な可能性を感じてしまう。
パナソニックからすればS1/S1R発売時には、自社開発で用意する三本のレンズ(2020年度末までには合計10本以上!)、ライカの既存&新規開発レンズ(めちゃめちゃ高価だけど(笑))、そしてかなりの数のシグマレンズが一気に使えるようになる。これはすごいことだし、この仕組みにはかなりの本気を感じた。
何よりも大事な新マウントカメラの発表時に、スタートダッシュをきっちりやれるだけのレンズ本数を用意し、(これはニコンやキヤノンが最初に用意するレンズ本数や、全てを自社開発にこだわる姿勢とは対照的な戦略)、さらに泣く子も黙るライカというブランドイメージを獲得し、そして高品質で比較的低価格なシグマレンズも揃っている、という魅力ある提案は、ユーザーのハートを激しく揺さぶるものだ。ユーザーはレンズ本数の面でも安心できるし、マウントを変更してでも「買ってみたい」と思わせるものだと思う。
動画を撮らないこともあって、いままでマークしなかったパナソニックだけど、これはひょっとして大化けするかもしれない。そして「Lマウントアライアンス」がうまくいった際には、マーケティングの教科書に載せるべき程の画期的な事例だと思う。
ペンタックスや富士フィルムは、既に中版サイズのカメラをラインアップしているので、この「フルサイズミラーレス」という流れには乗らないかもしれない。
そしてオリンパスはどう出るのだろう?発売が噂されている「超高性能カメラ」とはいったいどんなものなのか?またフルサイズレンズに関する特許を持っているのはなぜ?ソニーEマウントへ参入するという噂は?。。
さらに「ライカが行くなら負けてはいられない」とばかり、なんとカールツァイスからもぶっとんだフルサイズミラーレスカメラが!これは既存のカメラに対するアンチテーゼか!※レンズ交換式ではないし価格も高そうだけど^^;
そして迎え撃つソニーの次の一手は?動物瞳AFの発表、レンズの拡充と着実な進化はあるけれど、ここらでぶっ飛んだ製品を発表してほしい。ソニーは時としてユーザーが想像もできないアッと驚く製品を発表するのが持ち味。そのことが一番の魅力だと思っている。
この、生き馬の目を抜くような「フルサイズミラーレス戦国時代」は始まったばかり。ニコンやキヤノンもこのままで終わるはずがないのである。魅力的なイノベーションがユーザーの前に次々と現れることを期待したい。
たとえ買わなくても(笑)色々と妄想するのは面白いし、それがユーザーの特権。こんなこともカメラの楽しみなのだ。